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2004年08月09日

オキ日記 : ハイパーな装置

拙者の爺さんは明治生まれだが新しもの好きで、カメラ、アマチュア無線、パソコンなどなど、オタクな趣味はなんでもござれの人だった。部屋には防湿庫がずらりと並び、撮影会で撮ったどこぞの女性ヌード写真が額に入れて飾られていたりした。今考えるとよくやるな、スケベジジイめ、といったところだ。

拙者が幼稚園に通っていた頃、その爺さんから古くなったSHARPの書院をゆずってもらったことがある。特に何をするわけでもなかったのだけど、電源を入れるとリボンカセットがガチャガチャとせわしなく動き、液晶が明るくなる様は、身近に「サイバー」を感じられる瞬間だった。

そもそも当時はワープロとパソコンの区別もついていなかったわけだが、なんとなくパソコン>ワープロという方程式があることは感じていた。なぜならば爺さんの家にあるPC-98ではフロッピーからロードランナーが起動するのに対して、書院では何をしようとただ静かに文字が表示されるだけだったからだ。

あるときコロコロコミックを読んでいると、巻頭の読者プレゼントページで「Apple II(うろ覚え。とにかくAppleのパソコン)が1名様に当たります」と書いてあった。小さい写真で載っているそのApple IIのモニタには、林檎の写真が写っていた。そのとき、なぜだか拙者は「パソコンってやつは、調べたい言葉を入力すると、その言葉についての写真や音声をはじめ膨大な情報を手に入れられるハイパーな装置なのだ…」と思った。

すると猛烈にパソコンが欲しくなってきて、ハガキで応募してみたがあっさりと外れた。当然だ。なんせ全国で1名様だ、当たるわけがない。しかしWチャンスでチェンジマンのハンカチが当たった。戦隊物のファンであった拙者はApple IIのことなどさっぱり忘れて、幼稚園でそのハンカチを自慢した。

時は流れて1995年。Windows 95が発売され、パソコンブームにワープロの存在がかき消されようとした頃、拙者は中学生だった。書院は相変わらず遊びで文書を書く程度で、それを譲ってくれた爺さんも老衰で死んでいた。

ふと、コロコロで見たApple IIが頭の中をよぎった。「あのときのハイパーな装置が、いまは簡単に手に入るんだ…」と思った。すぐさま親におねだり攻撃を仕掛け、翌年にPC-9821 V13を手に入れた。プロバイダと契約し、インターネットに繋いだ。Yahoo! Japanが検索サービスを開始したばかりの時期で、ウェブサイトの数も今とは比べ物にならないくらい少なかったが、それでも田舎の中学生を熱中させるには十分だったのを思い出す。

さらに時が流れて現在、パソコンとそれを繋げるインターネットは進化を続けて、ようやっと頭の中で描いていた「ハイパーな装置」に近づいてきた気がしている。Yahoo! Japanであのときモニタの中に写っていた「林檎」を検索すると、1033040件のページと3714件の画像と31件のニュースがヒットする。「ああ、これが拙者の欲しかったモノなんだな…」と感じることも多くなった。

でもきっと、もっとおもしろくなるので見逃せないというか、離れられないというか現代に生きられて良かったなぁとホント思うわけです、最近。

※よく考えると、爺さんは自分の孫とはいえ、幼稚園のガキに20年近く前の価格で10万円くらいした機械をよく与えたなぁと思う。80歳くらいまでヌード写真撮ったりしていたわけで、ほとほとモーレツなジジイだった。

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