沢木耕太郎『杯(カップ)―緑の海へ』

ふだんスポーツのことなど語りもしない(少なくとも公の場では)人間が、オリンピックになると特番にしゃしゃり出てくることがよくある。その人と視聴者で、視点を共有するという意味合いはあるのだろうが、個人的にはあまり好きではない。日常的にその競技を見ていないお前に何が分かるのか、と。選手の4年間積み上げてきた努力と、それをサポートしてきたスタッフ、ファンの気持ちが汲み取れるわけがない、と。

本書を手に取ったとき、沢木もついにその類になったかよ、と思った。そしてフットボールを愛するスポーツライター達は何をしているのか、という苛立ちも覚えた。ノンフィクション作家に単行本を書かれて悔しくないのか?と脳内で罵声を浴びせてもみた。

が、読了したときにはそんな悪態をすべて謝罪したい気持ちになっていた。これは、立派なスポーツルポだ! 特に、終章でワールドカップ後の日韓戦まで取り上げる視点は秀逸だった。緑の海は、2002年だけではなく過去からも、未来へも、続いているのだ。日本と韓国の往復をはじめとした、「移動」を中心に話を進めていくところあたりも沢木らしい。

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