角田光代『空中庭園』

タイトルの意図するところを理解した時点で、やられたー!と思った。そのまま写真のタイトルにすれば、ふとした日曜日に原宿あたりのギャラリーで飾られていてもおかしくない。拙者はそれを目にして同じようにやられたー!と思うのだと思う。そしてすぐさま似たような写真を撮って、「インスパイア」などと言いながらフォトログにアップしたい衝動に駆られるだろう。そのくらい嫉妬したくなる素晴らしいタイトルだ。

本作は、壊れていながらもなんとか日常を送っている家庭の様子を俯瞰している。家庭崩壊とか、仮面夫婦って、小説のテーマとしては暗くて救いのないもの。だけど、似たような境遇の家庭で育った身としては、特別目を背けたくなる気持ちはない。そういう状況でも、良くも悪くも関係が続いていくのが家庭だし。まぁ実際にその家庭の中に身を置いているときは、胸くそ悪いわけなんだけど。

ただ、やはり家族でいる状態というのは、それだけでひとつ承認がなされているとも思う。居心地が悪いときがあってもマナとコウは家に帰ってくるし、無駄口にイラつきながらも母親は自分の母のために買い物をするし、愛がなくても父親は母親との家庭を維持する(あ、これは家族だからっていうよりきっと惰性ですね。ダメ男だし)んだろう。というようなことを思った。

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