伊坂幸太郎『グラスホッパー』

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拙者にとっては初めての伊坂本である。目を丸くしたというかなんというか、やはりこれは売れる小説家なのであるなぁということが一見して分かる。なんたって短い時間の中での出来事を描写する力が半端ない。まるで計算しつくされたカット割りにようにテンポが良い。多分、このまま映像化しても遜色ないんじゃないかしら。まぁそういうわけで映画化が相次いでおるのだと思う。

お話の中身は、殺し屋業界でのいざこざに巻き込まれていく主人公、という流れ。主人公自身は、ただの若い元中学校教師(ただし妻を亡くしている)。そのため感情移入もしやすい。ずらりと出てくる殺し屋たちは少々現実感に欠けるものの、そもそも殺し屋という存在自体が非現実的なものであるからして、意外とすんなりと受け入れられる。ジャック・クリスピンのくだりなどはニヤニヤしながら読んだ。

あと、文庫本の装丁がとてもいい。マット紙全面に彩度を抑えたどこか寂しげな写真。もう一度言うが、とてもいいと思う。

★★★☆☆

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