- 2009年10月15日 17:32
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自分より身体能力の高い選手と戦うには、相手よりも先に動き出すこと。そのときに必須なのが、瞬時に状況判断をして正解を導く力だ。それを、中村俊輔は「察知力」と呼ぶ。中村俊輔『察知力』
本書を読むと、中村俊輔というサッカー選手が、努力の固まりのような人であることが改めて分かる。世界で活躍した先人であるカズ(三浦知良)や、中田英寿も、言うまでもなく努力の人ではある。しかし、それに勝るとも劣らない「毎日の反復練習と情報収集、こまめな目標設定と自己反省」を続けている他の選手を、どれだけ頭に思い浮かべることができるだろうか。
思えば、中村俊輔は私にとってあまり好きなプレーヤーではなかった。当時の日本代表監督であったトルシエによって日韓ワールドカップのメンバーから外されたときには、1ミリも残念という気持ちが沸いてこなかった。真ん中でやりたがる割に、屈強なボランチに体を当てられるとすぐに倒れてしまう貧弱なファンタジスタ(の卵)という印象が強かったからだ。また、同じようなポジションで絶対的に信頼を寄せることができる、中田英寿という現役バリバリの一流プレーヤーが存在していることも、やはり中村を不要と感じさせる要因の一つだった。
2000年当時、代表では左サイドばかりで起用されることについて、中村はマリノスの監督であったアルディレスに相談したという。そのときのアルディレスの答えを引用する。
「ベンチで試合を見ていても得るものは何もない。どんなポジションであっても、先発の11人に選ばれて、グラウンドに立つべきだ。」
この言葉と、2002年のワールドカップメンバー落選という挫折を抱えて、彼はイタリアへ渡った。その後の中村俊輔は、見違えるように爆発的な成長を遂げたように思う。トップ下以外の様々なポジションをこなし、必要以上に削られるセリエAのディフェンスをかいくぐる。才能のある日本人選手が、ただ海外に渡るだけで実現できることではない。すべては、自分にとって何が必要なのかを感じ取り、日々の改善を怠らずにひたすら続けてきた者だけが成功を勝ち取る。とてもシンプルなことだが、中村俊輔のプレーを見ているとそれを深く実感できる。
もちろん、前述の「あまり好きなプレーヤーではなかった」という言葉が過去形であることから分かるように、現在はお気に入りのプレーヤーの1人だ。
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