- 2009年8月17日 08:31
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本書は、教育における国語の重要性を語る「国語教育絶対論」、著者の家庭生活を描いたエッセイ集「いじわるにも程がある」、出生地である満州を訪ねた「満州再訪記」の3部構成になっている。直接的にメインテーマを扱っているのは、最初の「国語教育絶対論」だけで、他の2編はハッキリ言ってしまうと蛇足である。
タイトルが絶妙だと思い読み始めたが、本書の中で「これ(注:"祖国とは国語である"という言葉)はもともとフランスのシオランという人の言葉らしい」と明かされていて、いささかがっくりしてしまった。気になったのでシオランを調べてみたが、フランスではなくルーマニア人だった(パリに定住し、フランス語での著書が多くある)ため、二重にがっくりであった。裏付けとってないの?
とまぁ、重箱の隅をつつくのはこのくらいにしておいて、「国語教育絶対論」である。著者の主張する内容や、国語の重要性、必要性については激しく同意したい。が、いかんせん言論を裏付ける根拠や、客観的なデータが、あまりにも少ない。ほとんどの言説は、著者の主観や経験に基づいて展開されているため、かなり説得力に欠けている。うーん、もったいない。
なんだか文句ばかりになってしまったので、本書で感銘を受けた一節を引用しておく。「愛国心」という言葉に抱くイメージを、一変させてしまう名文だと思う。
英語で愛国心にあたるものに、ナショナリズムとパトリオティズムがあるが、二つはまったく異なる。ナショナリズムとは通常、他国を押しのけてでも自国の国益を追求する姿勢である。私はこれを国益主義と表現する。
パトリオティズムの方は、祖国の文化、伝統、歴史、自然などに誇りをもち、またそれらをこよなく愛する精神である。私はこれを祖国愛と表現する。家族愛、郷土愛の延長にあるものである。
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