同じく新星堂にて。このアルバムに収録されているInspirationには、ちょっとした思い出がある。Inspirationは、ご存知『鬼平犯科帳』のエンディングテーマなのだけど、拙者が小学生だった頃、テレビでその鬼平を見ていた親父がある日こう言った。「おい、あの曲テープで売ってないのか」
うちの親父は音楽には一切興味がなく、歴史小説を愛する男であった(過去形だけどまだ生きている)。どのような音楽にも興味を示さず、拙者が聞いている音楽をも馬鹿にしていたような男が、”自分の手で再生ボタンを押して音楽を聴きたがった”という事実に拙者は驚愕した。すでに流通しているメディアはCDであるというのに、テープで買おうとした親父の時代錯誤は隅に置いておくとして。
拙者はあわてて近所のCDショップに走ってCDを探したが、そのときの拙者はカタカナの「ジプシー・キングス」が「Gipsy Kings」という綴りであるということを知るには幼すぎた。結局、その曲は見つからなかった。
そのときの曲が今こうして、拙者に聞かれている、という事実が非常に不思議だ。
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