佐藤秀峰『新ブラックジャックによろしく』5

「政治家にでもなれよ ムツミちゃん」「なって法律を変えろよ……」

日本で臓器移植が始まった頃、僕は高校生だった。学校をサボった昼時に見るテレビには、どこかの人の臓器が、またどこかの人に移植されるという言葉とともに、クーラーボックスを担いでヘリコプターに乗り込む白衣の人たちが映っていた。

脳死が人の死と認められるようになったことは理解したつもりでいても、それが一体どういうことなのか、漠然としか受け止められていなかったように思う。まぁ、しっかり受け止めろというのが無理な話な気はするけれど。このように、頭では分かっていたつもりでいても、実際の現場に立ち会うと大きなとまどいを感じるものなんだろう。

例えば今、僕に30年くらい連れ添ってきた愛する妻がいるとして(仮定くらいさせてくれ!)、脳死になったからといって臓器提供にOKと言えるだろうか。例えば小学生からの親友が脳死になって、体中の臓器を取り除かれた姿を見て、どういう感情が芽生えるのだろうか。

今度、ホルモンを食べるときにでも、また少し考えてみよう。

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